弁護士ブログ(日々の出来事)
2013年3月28日 木曜日
不動産競売事件の数はどのくらいなのか
金融法務事情では前号の破産事件に続いて、東京地裁本庁と大阪地裁本庁の平成24年の不動産執行事件の概要が掲載されている(3月25日1966号)。
不動産競売事件数は、東京地裁が平成15年4609件、20年3669件、24年2692件と減少している。大阪地裁でも平成15年4483件、20年3365件、24年2391件と減少している。双方の経済力の大小を考えると、東京の方が競売件数が少ない。不動産競売事件となる紛争数が東京と大阪で同数とは考えられないので、東京では競売事件にまで行かないうちに任意売却などの方法で解決しているということなのか、大阪の方が紛争解決手段として不動産競売が、使いやすい方法として認知されているということなのかは分からない。
競売事件での売却率(落札率)は、東京が、平成17年以降90パーセントを超え、24年も97パーセントとなっている(21年は9割を下回った。)。大阪では、18年から90パーセントを超えている(20年、21年は9割を下回った。)。なお、東京、大阪とも、自用マンション(債務者兼所有者が自用の不動産(自宅など)として使用するもの)の競売事件(明け渡しが比較的容易な事件)について申立てから配当まで7か月程度で終了する運用を行っている(大阪ではファストトラックと称しているようである。)。
その他の事件を含めても、東京、大阪とも申立てから配当間での期間は短くなっており、東京で10か月、大阪で8,5か月という状態のようである。これには、物件の案内が不動産競売物件案内サイト(BITシステム)によりスムーズにいくようになったことが大きいようである(引渡命令もその一助になっている。また取得代金へのローンの付与が容易になったことも大きな要因だろう。)
引渡命令についても、東京地裁で、平成15年1732件、20年809件、24年815件と減少しているが、平成20年以降は一定数の申し立てが存在する。売却実績(平成15年2680件、20年1772件、24年1851件)との対比からすると、20年、24年ともに4割を超えており、引渡命令をもらえる事件が競売事件となっている可能性がある。大阪では引渡命令が平成15年732件、20年540件、24年683件であり、それぞれの売却件数(15年2426件、20年1941件、24年2032件)と比較すると、ほぼ3割程度にとどまる。これはどういう意味なのか、大阪の競売申立事件の多さにどのように関連しているのか興味深い。
不動産競売事件数は、東京地裁が平成15年4609件、20年3669件、24年2692件と減少している。大阪地裁でも平成15年4483件、20年3365件、24年2391件と減少している。双方の経済力の大小を考えると、東京の方が競売件数が少ない。不動産競売事件となる紛争数が東京と大阪で同数とは考えられないので、東京では競売事件にまで行かないうちに任意売却などの方法で解決しているということなのか、大阪の方が紛争解決手段として不動産競売が、使いやすい方法として認知されているということなのかは分からない。
競売事件での売却率(落札率)は、東京が、平成17年以降90パーセントを超え、24年も97パーセントとなっている(21年は9割を下回った。)。大阪では、18年から90パーセントを超えている(20年、21年は9割を下回った。)。なお、東京、大阪とも、自用マンション(債務者兼所有者が自用の不動産(自宅など)として使用するもの)の競売事件(明け渡しが比較的容易な事件)について申立てから配当まで7か月程度で終了する運用を行っている(大阪ではファストトラックと称しているようである。)。
その他の事件を含めても、東京、大阪とも申立てから配当間での期間は短くなっており、東京で10か月、大阪で8,5か月という状態のようである。これには、物件の案内が不動産競売物件案内サイト(BITシステム)によりスムーズにいくようになったことが大きいようである(引渡命令もその一助になっている。また取得代金へのローンの付与が容易になったことも大きな要因だろう。)
引渡命令についても、東京地裁で、平成15年1732件、20年809件、24年815件と減少しているが、平成20年以降は一定数の申し立てが存在する。売却実績(平成15年2680件、20年1772件、24年1851件)との対比からすると、20年、24年ともに4割を超えており、引渡命令をもらえる事件が競売事件となっている可能性がある。大阪では引渡命令が平成15年732件、20年540件、24年683件であり、それぞれの売却件数(15年2426件、20年1941件、24年2032件)と比較すると、ほぼ3割程度にとどまる。これはどういう意味なのか、大阪の競売申立事件の多さにどのように関連しているのか興味深い。
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2013年3月23日 土曜日
破産事件は、どのくらいあるのだろうか
毎年、この時期になると、前年の裁判所で扱った破産事件の概要が金融法務事情に掲載される(1965号)。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の裁判所である(いずれも本庁-福岡の場合は北九州、久留米を除く福岡地区だけである)。
平成24年(1月から12月)での新受件数を平成18年と比較すると相当に減少している(札幌4817→2779、仙台2313→943、東京25694→15923、名古屋4791→2587、大阪11921→7034、広島2632→1356、高松801→358、福岡4614→25299.ただしこのうち法人は減少していない((札幌144→190、仙台20年との比較94→46、東京2421→2866、名古屋267→385、大阪777→785、広島80→121、高松資料なし、福岡161→171)。
つまり、自然人破産がかなり減ったということになる。この傾向は、24年だけのことではなく、この数年のことである。以前は、サラ金破産となった人が、逆に過払金がはいることになって、破産を免れたということなのかもしれない。
このことは、破産事件の中で破産管財人がつけられる事件が増えたことにも表れているように思う。法人の破産事件では、ほとんど全事件で管財人がつけられる。それ以外の自然人の場合にどの程度の割合で管財人がつけられているかは、裁判所の運用によって異なるが、東京地裁では弁護士数が多く少額管財事件制度もあって6割近い事件で管財人が付されており、資料から直接読み取れないが自然人の場合も3割以上の事件で管財人が付されているようである(名古屋もほぼ同様である。)。
札幌は自然人管財人律が25パーセント、大阪地裁では、全事件で3割、自然人管財事件で2割程度である。福岡では全体で2割弱、自然人管財で12パーセント程度である。自然人破産事件における換価基準そのものは裁判所による大きな違いはないようであるが、運用については、微妙に違いがあるようである。
平成24年(1月から12月)での新受件数を平成18年と比較すると相当に減少している(札幌4817→2779、仙台2313→943、東京25694→15923、名古屋4791→2587、大阪11921→7034、広島2632→1356、高松801→358、福岡4614→25299.ただしこのうち法人は減少していない((札幌144→190、仙台20年との比較94→46、東京2421→2866、名古屋267→385、大阪777→785、広島80→121、高松資料なし、福岡161→171)。
つまり、自然人破産がかなり減ったということになる。この傾向は、24年だけのことではなく、この数年のことである。以前は、サラ金破産となった人が、逆に過払金がはいることになって、破産を免れたということなのかもしれない。
このことは、破産事件の中で破産管財人がつけられる事件が増えたことにも表れているように思う。法人の破産事件では、ほとんど全事件で管財人がつけられる。それ以外の自然人の場合にどの程度の割合で管財人がつけられているかは、裁判所の運用によって異なるが、東京地裁では弁護士数が多く少額管財事件制度もあって6割近い事件で管財人が付されており、資料から直接読み取れないが自然人の場合も3割以上の事件で管財人が付されているようである(名古屋もほぼ同様である。)。
札幌は自然人管財人律が25パーセント、大阪地裁では、全事件で3割、自然人管財事件で2割程度である。福岡では全体で2割弱、自然人管財で12パーセント程度である。自然人破産事件における換価基準そのものは裁判所による大きな違いはないようであるが、運用については、微妙に違いがあるようである。
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2013年3月10日 日曜日
銀行への弁護士会照会(東京地判平成24.11.26)
一般の人にはわかりにくいかもしれないが、弁護士法には、弁護士会が、会員(弁護士のこと)の受任している事件についての申出を受けて、適切な場合は、公務所または公私の団体に対して、その報告を求めることができる(弁護士法23条の2)。
これは、提訴前にできることから、弁護士にとって非常に便利な制度となっている。例えば、携帯電話の番号しか分からない場合に、液体電話会社にその番号での登録住所を知る場合などである。
どのようなことまで照会できるかどうかの問題もあるが、紹介先にこれに応じて報告する法的な義務があるのか、拒否された場合はどうなるのかなど問題点が多く存在する。応じるべき義務につては、この制度が弁護士法という法律に定めがあることから、照会先は、これに応じるべき法的義務があると考えられている。ただし、照会先も照会された事項が第三者の個人情報であることから、その第三者との関係で守秘義務がある場合など簡単にこれに応じられないということがある。
また、照会先にこれに応じるべき法的義務があるとしても、拒否された場合に、照会するのは弁護士会であって、個々の弁護士ではなく、また依頼者ではないから、だれが照会先に対し、何らかの請求をできるかが問題となる。
この判決(東京地判平成24.11.26金融法務事情1964号108頁)は、銀行に対する照会を、銀行はこれを拒否した事案についての判断である。この事件は、債務名義を持った個人が、相手方の取引先と考えられる銀行に対して、①銀行預金濃霧、支店名、口座番号などの照会、②相手方が個別の口座から第三者への送金の事実の有無などを、弁護士会を通じて照会したところ、銀行がこれを預金者の同意が確認できていない、顧客の応諾不可につき回答不能などの回答がされた。
このため、依頼者が、銀行を被告といsて、銀行には弁護士会に対する報告義務が存在すること、②銀行が報告しないことが依頼者に対する関係で不法行為に当たるとして慰謝料を請求した事件である。
判決は、①弁護士会照会に対する報告義務が法的な義務であることを確認したうえで、照会を受けた銀行に報告しない正当な理由がある場合は、報告を拒絶できるとしている。
②正答理由の判断に際しては、弁護士会照会制度の司法制度における重要な役割に照らし、また決済機能を独占する銀行の公共的責務という観点からすると、金融機関の一般的な守秘義務を考慮しても報告しないことに正当な理由があるとは言えないとする(債務名義が存在する以上、権利者からの義務者の預金状況については権利者に対する関係では保護されるべき営業秘密とは言えない。義務者の第三者への送金の状況も同様に権利者との関係では保護されるべき営業秘密ではない。)。
また、弁護士会へ報告することは正当行為であり、預金者に対する不法行為にはならないとしている。
③依頼者が、銀行に弁護士会への報告義務濃霧を確認する訴えの利益があるかについては、こうれを肯定している(理由は銀行が応じないことにより、依頼者(債務名義上の権利者)の義務者に対する権利が侵害されている。依頼者は弁護士会照会により保護されるべき権利の救済を求めるため、公法上の法律関係の確認の訴えとして、報告義務の確認を求めることができる。)。
④慰謝料請求については、報告義務についての判断が明確でないことなどの事情から銀行に違法性についての認識が無かったとして、請求を棄却している。
この判決に、銀行は控訴している。預金者の保護されるべき正当な利益を、債務名義の存在を理由として、弁護士会照会による利益より低いものとみている点など興味深い判決である。
これは、提訴前にできることから、弁護士にとって非常に便利な制度となっている。例えば、携帯電話の番号しか分からない場合に、液体電話会社にその番号での登録住所を知る場合などである。
どのようなことまで照会できるかどうかの問題もあるが、紹介先にこれに応じて報告する法的な義務があるのか、拒否された場合はどうなるのかなど問題点が多く存在する。応じるべき義務につては、この制度が弁護士法という法律に定めがあることから、照会先は、これに応じるべき法的義務があると考えられている。ただし、照会先も照会された事項が第三者の個人情報であることから、その第三者との関係で守秘義務がある場合など簡単にこれに応じられないということがある。
また、照会先にこれに応じるべき法的義務があるとしても、拒否された場合に、照会するのは弁護士会であって、個々の弁護士ではなく、また依頼者ではないから、だれが照会先に対し、何らかの請求をできるかが問題となる。
この判決(東京地判平成24.11.26金融法務事情1964号108頁)は、銀行に対する照会を、銀行はこれを拒否した事案についての判断である。この事件は、債務名義を持った個人が、相手方の取引先と考えられる銀行に対して、①銀行預金濃霧、支店名、口座番号などの照会、②相手方が個別の口座から第三者への送金の事実の有無などを、弁護士会を通じて照会したところ、銀行がこれを預金者の同意が確認できていない、顧客の応諾不可につき回答不能などの回答がされた。
このため、依頼者が、銀行を被告といsて、銀行には弁護士会に対する報告義務が存在すること、②銀行が報告しないことが依頼者に対する関係で不法行為に当たるとして慰謝料を請求した事件である。
判決は、①弁護士会照会に対する報告義務が法的な義務であることを確認したうえで、照会を受けた銀行に報告しない正当な理由がある場合は、報告を拒絶できるとしている。
②正答理由の判断に際しては、弁護士会照会制度の司法制度における重要な役割に照らし、また決済機能を独占する銀行の公共的責務という観点からすると、金融機関の一般的な守秘義務を考慮しても報告しないことに正当な理由があるとは言えないとする(債務名義が存在する以上、権利者からの義務者の預金状況については権利者に対する関係では保護されるべき営業秘密とは言えない。義務者の第三者への送金の状況も同様に権利者との関係では保護されるべき営業秘密ではない。)。
また、弁護士会へ報告することは正当行為であり、預金者に対する不法行為にはならないとしている。
③依頼者が、銀行に弁護士会への報告義務濃霧を確認する訴えの利益があるかについては、こうれを肯定している(理由は銀行が応じないことにより、依頼者(債務名義上の権利者)の義務者に対する権利が侵害されている。依頼者は弁護士会照会により保護されるべき権利の救済を求めるため、公法上の法律関係の確認の訴えとして、報告義務の確認を求めることができる。)。
④慰謝料請求については、報告義務についての判断が明確でないことなどの事情から銀行に違法性についての認識が無かったとして、請求を棄却している。
この判決に、銀行は控訴している。預金者の保護されるべき正当な利益を、債務名義の存在を理由として、弁護士会照会による利益より低いものとみている点など興味深い判決である。
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2013年3月 7日 木曜日
賃借人からの解除(東京地判平成24年6月26日)
不動産賃貸借契約の賃借人から行う解除は、結構微妙な問題である。家屋賃貸借契約における賃貸人からの解除は、信頼関係破壊の理論に基づいて単純な債務不履行では解除はできないとされている。では、賃借人から行う解除の場合はどうであろうか。
信頼関係破壊理論は賃借人保護という要素が大きいと考えられる。ただ、民法は賃借物の一部が滅失した場合はその残存する部分のみでは賃貸借の目的を達しない場合に限って賃貸借を解除できるとしているばど(611条2項)、一部の債務不履行があってもそれだけでは解除できないという立場に立っていると思われる。
そこで、賃借人は、賃貸人にどのような債務不履行があれば賃貸借契約を解除できるかという問題は結構大きな問題となる。
それは、賃借人からの債務不履行解除が認められない場合は、単なる中途解約の申し入れということになり、中途解約の場合は、例えば6か月間の予告期間を要するとか、敷引特約がある場合は、その分の敷金が差し引かれるからである(債務不履行解除が認められる場合には、敷引特約は働かないと考えられている。)。
そうなると店舗や事務所などの場合は、1年程度の賃料分が返還されるかどうか、という結構大きな問題となることになる。
東京地判平成24年6月26日(判例時報2171号62頁)は、東京新宿のビルの地下1階を賃借したテレマーケティング業者が日常的にコバエが発生しており、それが賃貸人の賃貸借契約上の債務不履行に当たるとして、経済的損害、無形の損害についえの損害賠償責任が認められたがそれに基づく解除は認められかったケースである。
この裁判例は、日常的なコバエの発生の事実、その発生原因がビルの汚水槽の機能や構造にあるとの事実を認めたうえで、従業員が不快感を持つとともに、、事務に集中できない、コバエ対策のために総務担当の事務員がゴミの処理について従業員に注意を促す広報に従事するなどの余分な業務が増える、窓が開けられない、外部から来た客の不快感に苦慮するなどの事実を認めて、本件賃貸借契約の目的に沿った賃借人の利用が一定程度背言されたとし、賃貸借契約上の賃貸人の債務不履行の成立を認め、損害としてコバエ発生の調査費用、コバエ発生のために退職者がでたことからその補充のために増加した労務費の一部いついても、損害を認め、さrない無形の損害(上記従業員の不快感など財産上の損害と異なる「数理的な算定のできない無形の損害」を認めている(ほぼ1か月の賃料と同額)。
このように、賃貸人の債務不履行は認められ、一定程度の損害の発生は認めたものの、信頼関係が破壊されていたということはできないとしたものである。
信頼関係破壊理論は賃借人保護という要素が大きいと考えられる。ただ、民法は賃借物の一部が滅失した場合はその残存する部分のみでは賃貸借の目的を達しない場合に限って賃貸借を解除できるとしているばど(611条2項)、一部の債務不履行があってもそれだけでは解除できないという立場に立っていると思われる。
そこで、賃借人は、賃貸人にどのような債務不履行があれば賃貸借契約を解除できるかという問題は結構大きな問題となる。
それは、賃借人からの債務不履行解除が認められない場合は、単なる中途解約の申し入れということになり、中途解約の場合は、例えば6か月間の予告期間を要するとか、敷引特約がある場合は、その分の敷金が差し引かれるからである(債務不履行解除が認められる場合には、敷引特約は働かないと考えられている。)。
そうなると店舗や事務所などの場合は、1年程度の賃料分が返還されるかどうか、という結構大きな問題となることになる。
東京地判平成24年6月26日(判例時報2171号62頁)は、東京新宿のビルの地下1階を賃借したテレマーケティング業者が日常的にコバエが発生しており、それが賃貸人の賃貸借契約上の債務不履行に当たるとして、経済的損害、無形の損害についえの損害賠償責任が認められたがそれに基づく解除は認められかったケースである。
この裁判例は、日常的なコバエの発生の事実、その発生原因がビルの汚水槽の機能や構造にあるとの事実を認めたうえで、従業員が不快感を持つとともに、、事務に集中できない、コバエ対策のために総務担当の事務員がゴミの処理について従業員に注意を促す広報に従事するなどの余分な業務が増える、窓が開けられない、外部から来た客の不快感に苦慮するなどの事実を認めて、本件賃貸借契約の目的に沿った賃借人の利用が一定程度背言されたとし、賃貸借契約上の賃貸人の債務不履行の成立を認め、損害としてコバエ発生の調査費用、コバエ発生のために退職者がでたことからその補充のために増加した労務費の一部いついても、損害を認め、さrない無形の損害(上記従業員の不快感など財産上の損害と異なる「数理的な算定のできない無形の損害」を認めている(ほぼ1か月の賃料と同額)。
このように、賃貸人の債務不履行は認められ、一定程度の損害の発生は認めたものの、信頼関係が破壊されていたということはできないとしたものである。
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2013年2月13日 水曜日
ホームページ作成とリース契約(大阪地判平成24.5.16)
ホームページ作成がリース契約上で問題となった裁判例が出されている。大阪地判平成24.5.16(金融法務事情1963号114頁)である。うサプライヤーとユーザーとの間では、サプライヤーユーザーにホームページ作成用ソフトを提供し、ホームページを作成し、その後、そのホームページがより閲覧されるように、検索エンジンの最適化対策(SEO)妹尾をして貰うなどのメンテナンスを受けるというものである。
もともとのホームページ作成用ソフト自体は5万円程度のものであり、ユーザーとしても、そのソフトを利用して他社のためにホームページを作成して販売するというようなことをやるつもりがない。
言ってみれば、本来は当初のホームページの作成のためにある程度の費用は発生するが、その後は、もっぱらSEOを使ってのメンテナンスということが中心となる。
そうすると、最初のホームページの作成ソフトを使ってのホームページの作成については、立替払いということになって、残りのSEOを使っての管理は、賃料と同じように毎月生じる分を支払うということが実態に適合した契約関係ということになると思うが、そうなると中途解約の問題や、売上を早急に回収したいサプライヤーの思惑もあって、リース契約という外形を使うことが考えられたということになったと思われる(また技術革新の速度が速いことから途中で他社のものに乗り換えられないようにリース契約という形を取ることがサプライヤー経済的合理性に適合するということもあろう。)。
この裁判の事案は、このようなサプライヤーがリース期間の途中で倒産したということでユーザーがサービスの提供を受けられなくなって、リース会社に対して、残リース料の支払い義務ばないことの確認と、既払リース料の返還を求めた事件である。
もともとリース対象物件とはしにくいものであるが、リース契約書に書かれている物品名はサプライヤーの社名のオリジナルソフトとされていた。リース会社の担当者は、ユーザーに対し、ホームページの作成など役務の提供がふくまれないかと確認したようであり、役務を受けられなくともリース料(毎月2万円弱)の支払いを免れない点を説明しないまま、ソフトの検袖は終わったと判断したようである。
このような場合は、リース契約の対象について、サプライヤーとユーザー間のものと、リース会社とユーザー間のものとで異なるとして、リース契約は無効であるが、ユーザーがそのような空リースに加担したとしたとして、信義則上、その無効をリース会社に主張できないという解釈も成り立つ場合であり、逆に、ユーザーはもともとその商品の内容を正確に理解しておらず、当該リース会社がそのような役務の提供の場合にリース契約を結ばないという方針であることを知らず(このことは通常知られていないと思われる。)、リース会社をだますという意思も無かったとして、リース会社に対してリース契約の無効を主張できるとしたとしてもそれほどおかしな事案では無かったのかもしれない。また、一定期間はサービスの提供を受けていたという事実もある。
この判決では、リース会社にユーザーに対する質問などの点で落ち度があるとし、リース会社側の落ち度の方が、ユーザー側の落ち度より大きいとして、サプライヤーに対する抗弁を信義則を根拠にリース会社にも主張できるとして、将来分のリース料債務の不存在を認めている。この事件は控訴されたものの、その後取り下げられて、確定している。
実態からすると、毎月の支払い分について、サービスの提供を受けなくなた時期以降の支払いを免れるという結論はある意味では当然のように思われるが、リース契約という枠組みの中でそれが可能なのかは、検討される必要がある。
この事案ではサプライヤーが倒産しているが、サプライヤーが倒産しておらず、ユーザーとしては、サプライヤーが当初話していたような検索エンジンの効果が上がらないというような理由で、サプライヤーの債務不履行を理由としてリース料を支払わないというような場合はどうなるのか、といった問題も生じるように思う。
もともとのホームページ作成用ソフト自体は5万円程度のものであり、ユーザーとしても、そのソフトを利用して他社のためにホームページを作成して販売するというようなことをやるつもりがない。
言ってみれば、本来は当初のホームページの作成のためにある程度の費用は発生するが、その後は、もっぱらSEOを使ってのメンテナンスということが中心となる。
そうすると、最初のホームページの作成ソフトを使ってのホームページの作成については、立替払いということになって、残りのSEOを使っての管理は、賃料と同じように毎月生じる分を支払うということが実態に適合した契約関係ということになると思うが、そうなると中途解約の問題や、売上を早急に回収したいサプライヤーの思惑もあって、リース契約という外形を使うことが考えられたということになったと思われる(また技術革新の速度が速いことから途中で他社のものに乗り換えられないようにリース契約という形を取ることがサプライヤー経済的合理性に適合するということもあろう。)。
この裁判の事案は、このようなサプライヤーがリース期間の途中で倒産したということでユーザーがサービスの提供を受けられなくなって、リース会社に対して、残リース料の支払い義務ばないことの確認と、既払リース料の返還を求めた事件である。
もともとリース対象物件とはしにくいものであるが、リース契約書に書かれている物品名はサプライヤーの社名のオリジナルソフトとされていた。リース会社の担当者は、ユーザーに対し、ホームページの作成など役務の提供がふくまれないかと確認したようであり、役務を受けられなくともリース料(毎月2万円弱)の支払いを免れない点を説明しないまま、ソフトの検袖は終わったと判断したようである。
このような場合は、リース契約の対象について、サプライヤーとユーザー間のものと、リース会社とユーザー間のものとで異なるとして、リース契約は無効であるが、ユーザーがそのような空リースに加担したとしたとして、信義則上、その無効をリース会社に主張できないという解釈も成り立つ場合であり、逆に、ユーザーはもともとその商品の内容を正確に理解しておらず、当該リース会社がそのような役務の提供の場合にリース契約を結ばないという方針であることを知らず(このことは通常知られていないと思われる。)、リース会社をだますという意思も無かったとして、リース会社に対してリース契約の無効を主張できるとしたとしてもそれほどおかしな事案では無かったのかもしれない。また、一定期間はサービスの提供を受けていたという事実もある。
この判決では、リース会社にユーザーに対する質問などの点で落ち度があるとし、リース会社側の落ち度の方が、ユーザー側の落ち度より大きいとして、サプライヤーに対する抗弁を信義則を根拠にリース会社にも主張できるとして、将来分のリース料債務の不存在を認めている。この事件は控訴されたものの、その後取り下げられて、確定している。
実態からすると、毎月の支払い分について、サービスの提供を受けなくなた時期以降の支払いを免れるという結論はある意味では当然のように思われるが、リース契約という枠組みの中でそれが可能なのかは、検討される必要がある。
この事案ではサプライヤーが倒産しているが、サプライヤーが倒産しておらず、ユーザーとしては、サプライヤーが当初話していたような検索エンジンの効果が上がらないというような理由で、サプライヤーの債務不履行を理由としてリース料を支払わないというような場合はどうなるのか、といった問題も生じるように思う。
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