弁護士ブログ(日々の出来事)

2013年4月20日 土曜日

保全事件はどうなっているのか

 保全事件、特に仮差押え事件減っているといわれている。東京地裁(本庁)での概況が示されている(金融法務事情1967号H25.4.10号)。どのくらい減っているのかというと、不動産の仮差押えが、平成20年の2092件に対して24年では1244件に減少している。債権仮差押えは1667件(H20年)から1327件(H24年)に減少している。
 

 もともと債権仮差押えは債務者に与える影響がが大きいので対しる不動産仮差押えと比べて要件が厳しいので、あまり活用されていないと思われるが、それにしても仮差押え事件は少ないように思われる。原因は、不動産仮差押えについては、抵当権が付されていない不動産が少ないこと、抵当権が付されている不動産の場合、不動産価格が低迷していることから、抵当権が設定されている不動産の余剰価値(評価額から設定額(極度額)を差し引いた場合に余剰が認められないことなどが考えられる。

 地方と異なり特に東京地裁の管内のようにほとんどの不動産が担保物件として認知されているところでは少ないのかもしれない(地方の場合は、未だ抵当権の付されていない不動産があって、相続が開始したような場合に、相続人の債権者が仮差押えをするというこtがあるかもしれない。
 

 保全事件のうち、仮処分もやはり少し減少しているようである。東京地裁での不動産に関する「係争物に関する仮処分(占有移転禁止や処分禁止の仮処分)」の件数は、平成20年767件、平成24年712件と少し減少したという程度である。係争物に関する仮処分は、まさに不動産に関する紛争の発生を前提とするものであるが、東京地裁(本庁)の管轄内でそもそも年間700件台ということが、少し少な過ぎるのではないかとも思う。不動産取引を巡る紛争が少ない、すなわち取引全体の量が少ないということであろうか。
 
 

 仮処分でのもう一つとして「仮の地位を定める仮処分」がある。これついては、紛争形態がさまざまであることから、いろいろな紛争が仮処分の場に持ち込まれる(工事の騒音がうるさい、日照権侵害などの理由による建築工事差止め、営業妨害事件や労働事件などで問題となる面談強要禁止、街宣活動禁止、解雇や解職された場合の地位保全ながある。

 平成20年436件、平成24年116件と増えているが、増えているのは、インターネット関係での発信者情報開示、投稿記事削除、発信者情報消去禁止(発信者情報禁止仮処分は、名誉棄損や営業妨害となる書き込みがあった場合に将来の損害賠償請求訴訟の前提としてその書き込みをした者を特定する必要があることから、メールアドレスなどのその発信者情報の削除の禁止を求めるもの)。これらの3分野を合わせて、平成20年では35件だったものが、24年では736件となっており、仮の地位を定める仮処分の20年から24年までの増加分約700件のほとんどを占めている(つまりこれらを除く仮処分事件は増えていないことになる。)。

投稿者 あさひ共同法律事務所 | 記事URL

2013年4月16日 火曜日

株主の総勘定元帳、勘定科目内訳書の閲覧請求

 株主(総株式の100分の3以上を保有する株主)は、株式会社に対し、会計帳簿等の閲覧又は謄写を請求できる(会社法433条1項、2項)。株主にこのような会社法上の権利が「被保全権利」として認められる以上、仮処分では、「保全の必要性」があれば、そのような閲覧・謄写を申請できる(民事保全法23条2項)。小規模閉鎖的会社の場合、相続が絡むとその点が問題となる場合がある。名古屋地裁H』24.8.13決定(会計帳簿等の閲覧謄写仮処分命令申立事件(判時2176号63頁)。

 これらの仮処分は、その後の株主代表訴訟などの訴訟の提起のために行われる場合ガ多いが、仮処分が認められれば、帳簿の閲覧・謄写ができるので、会社法433条の内容が実現されるという意味で満足的仮処分と言われ、大きな紛争となる。
 

 決定は、①株主名簿に付き、会社に対する配当請求の前提として、取締役の責任追及の前提とするものであり、被保全権利性を認めたうえで、保全の必要性につき、代表取締役に弁護士の職務代行者が選任されているとして(その者から見せて貰える)、保全の必要性が欠けるとした。
 

 ②勘定科目内訳書については、法人税の確定申告の際に必要な書類であり、会社法の定める計算書類(及びその附属明細書)に含まれない(つまり会社法上の請求権が及ばない)として、被保全権利ではないとした。
 

 ③総勘定元帳及び総勘定元帳を作成する際の資料となる契約書、信書、請求書、覚書、領収書、発注書、納品書、請書等については、「会計帳簿又はこれに関する資料」として、請求目的が、会社の代表取締役が多額の現金を持ち出していることに対し、取締役の責任追及を目的とするもであるとして、被保全権利性を認め、保全の必要性についても、会社資産を他の会社に移そうとしている事実から、肯定した。

 この問題は、ラ楽天対TBS事件でも問題となったが(東京地裁H19.6.15決定、控訴審は東京高裁H19.6.27金融商事判例1970号)、そのような大企業でhなく、相続が絡む閉鎖的会社でも問題となる事件である。
 

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