判例紹介

2013年2月13日 水曜日

ホームページ作成とリース契約(大阪地判平成24.5.16)

 ホームページ作成がリース契約上で問題となった裁判例が出されている。大阪地判平成24.5.16(金融法務事情1963号114頁)である。うサプライヤーとユーザーとの間では、サプライヤーユーザーにホームページ作成用ソフトを提供し、ホームページを作成し、その後、そのホームページがより閲覧されるように、検索エンジンの最適化対策(SEO)妹尾をして貰うなどのメンテナンスを受けるというものである。

 もともとのホームページ作成用ソフト自体は5万円程度のものであり、ユーザーとしても、そのソフトを利用して他社のためにホームページを作成して販売するというようなことをやるつもりがない。

 言ってみれば、本来は当初のホームページの作成のためにある程度の費用は発生するが、その後は、もっぱらSEOを使ってのメンテナンスということが中心となる。

 そうすると、最初のホームページの作成ソフトを使ってのホームページの作成については、立替払いということになって、残りのSEOを使っての管理は、賃料と同じように毎月生じる分を支払うということが実態に適合した契約関係ということになると思うが、そうなると中途解約の問題や、売上を早急に回収したいサプライヤーの思惑もあって、リース契約という外形を使うことが考えられたということになったと思われる(また技術革新の速度が速いことから途中で他社のものに乗り換えられないようにリース契約という形を取ることがサプライヤー経済的合理性に適合するということもあろう。)。
 


 この裁判の事案は、このようなサプライヤーがリース期間の途中で倒産したということでユーザーがサービスの提供を受けられなくなって、リース会社に対して、残リース料の支払い義務ばないことの確認と、既払リース料の返還を求めた事件である。
 

 もともとリース対象物件とはしにくいものであるが、リース契約書に書かれている物品名はサプライヤーの社名のオリジナルソフトとされていた。リース会社の担当者は、ユーザーに対し、ホームページの作成など役務の提供がふくまれないかと確認したようであり、役務を受けられなくともリース料(毎月2万円弱)の支払いを免れない点を説明しないまま、ソフトの検袖は終わったと判断したようである。
 

 このような場合は、リース契約の対象について、サプライヤーとユーザー間のものと、リース会社とユーザー間のものとで異なるとして、リース契約は無効であるが、ユーザーがそのような空リースに加担したとしたとして、信義則上、その無効をリース会社に主張できないという解釈も成り立つ場合であり、逆に、ユーザーはもともとその商品の内容を正確に理解しておらず、当該リース会社がそのような役務の提供の場合にリース契約を結ばないという方針であることを知らず(このことは通常知られていないと思われる。)、リース会社をだますという意思も無かったとして、リース会社に対してリース契約の無効を主張できるとしたとしてもそれほどおかしな事案では無かったのかもしれない。また、一定期間はサービスの提供を受けていたという事実もある。
 

 この判決では、リース会社にユーザーに対する質問などの点で落ち度があるとし、リース会社側の落ち度の方が、ユーザー側の落ち度より大きいとして、サプライヤーに対する抗弁を信義則を根拠にリース会社にも主張できるとして、将来分のリース料債務の不存在を認めている。この事件は控訴されたものの、その後取り下げられて、確定している。
 

 実態からすると、毎月の支払い分について、サービスの提供を受けなくなた時期以降の支払いを免れるという結論はある意味では当然のように思われるが、リース契約という枠組みの中でそれが可能なのかは、検討される必要がある。

 この事案ではサプライヤーが倒産しているが、サプライヤーが倒産しておらず、ユーザーとしては、サプライヤーが当初話していたような検索エンジンの効果が上がらないというような理由で、サプライヤーの債務不履行を理由としてリース料を支払わないというような場合はどうなるのか、といった問題も生じるように思う。


投稿者 あさひ共同法律事務所

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