判例紹介

2013年10月20日 日曜日

保証人が主債務を相続したことを知りながら保証債務を弁済した場合の主債務の消滅時効の援用(最2小H25.9.13)

保証人が、主債務を相続したことを知りながら、保証債務を弁済した場合に、その後、主債務に消滅時効が完成したとき、当該保証人は、主債務の消滅時効の完成とそれに伴う保証債務の消滅を主張できるかという問題である。事実関係は、A銀行の主債務者Bに対する貸付にCが保証人となっていたところ、Bが死亡し、Cのみが相続したというケースで、A銀行を代位弁済した保証協会がCに対し、訴訟をおこしたところ、Cが消滅時効を援用したというものである。第1審、控訴審ともにCの消滅時効の完成の主張を認めている(金融商事判例1426号19p以下)。Cの弁済が保証人としての弁済であって、相続した主債務者を弁済したのではない以上、主債務の消滅時効は別個に進行するということを前提としている(保証協会の主張する禁反言についても、そこまでには至らないとする。)。

 これに対し、上記の最高裁判決(同金融商事判例18p)は、Cは相続により、主債務者の地位と保証人の地位を兼ねることになり、保証債務の附従性に照らすと保証債務の弁済は、通常は主債務が消滅せずに存在することを当然の前提とし、主債務者兼保証人の地位にある者が主債務を相続したことを知りながらした弁済は、それが保証債務の弁済であっても、債権者に対し、併せて主債務の承認を表示することを包含するものといえるとした。したがって、保証人が主たる債務を相続したことを知りながら、保証債務を弁済した場合は、当該弁済は、特段の事由のない限り、主たる債務者による主たる債務者による承認として、消滅時効の中断理由となるとした。

 
 事実関係では、第1審判決でも、Cの単独相続については、他の相続人が相続を放棄し、CがBの相続財産である不動産を売却してその代金の中から弁済をしていると認定されている(この弁済を、AもCも、Cの保証人としての弁済と扱っていたと認定している。)。
 最高裁としても、確定した事実関係として、このようなCの弁済を保証人の弁済と扱うことから、その場合に主債務に対する関係で判示の理論構成となったものと思われる。弁済の場合、誰のどの債務に対する弁済なのかは、細かく言えば、領収書の書き方にも影響して、結構難しい問題であった(例えば、保証人の付されている債務への弁済か、求償権の発生する弁済かなど)。Cとしても、Bの相続人としても弁済かCの保証人としての弁済かについては、消滅時効の完成の問題もあって考え抜いた弁済であったと思われる。
 ただ、「包含関係」については、このケースで、仮にCが相続した主債務の弁済とした場合は、Cの固有の保証債務についての承認も包含しているというのかどうかが気になった。

 実務上は、個人がアパートを経営していて、子供がその連帯保証人の場合は多々存在するので、このようなケースは思った以上にあると思われる。また、夫婦で住宅ローンを連帯債務で組んでいる場合に、その一方が死亡した場合はどうなるのかといった点が気になる。

 もう少し大きな問題としては、このケースはCが主債務を相続したことを知っている場合であるが、法廷単純承認をした場合で、その場合について、単純に主債務を相続したことを知っている場合してよいかどうかという判断の問題(事実認定の問題かもしれない。)である。





  



投稿者 あさひ共同法律事務所

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