判例紹介

2013年6月 6日 木曜日

将来債権の譲渡後に譲渡禁止特約付きで生じた債権譲渡と民法468条2項但書(東京地判平成24.10.4)

 債権者A、債務者B間の将来債権について、AからCに譲渡され、その後に発生した将来債権について債権者債務者間(AB間)でり譲渡禁止特約が合意された場合、その債権はAからCに譲り受けられることになるのかどうか。この点が、この譲渡禁止特約つき債権を差し押さえたD(国)との間で問題となった事件がある。将来債権の譲渡契約の際には、その将来債権に譲渡禁止特約が付されるかどうかは分からない。そうすると、民法466条2項但書で、譲渡禁止特約は善意の第三者に対抗できないとされているので、Cが譲渡契約時にそのようなことを知るはずがないので、466条2項但書の第三者に当たるというこtも考えられる。他方、将来生じる債権について、その債権をどのようなものとするか(どのような条件を付けるか)は、債権者債務者間でその時点の状況で合意されることであるから、そもそも466条2項但書の適用はないとも考えられる。
 
 この点について判例(東京地裁平成24・10、4判例時報2180号63頁)は、2項但書の適用はなく(将来債権の譲渡時点での善意を論じるのは不可能で無意味とする。)、その結果CDが対抗関係に立つことがないので、差押を行ったDを勝たせた。譲渡禁止特約により当該債権はCには譲渡されていないという理解であろう(準物権行為説による)。

 将来債権の譲渡は債権者Aを拘束することはあっても、AC間でどのような性質の債権とするかについては、なんらの効力も生じないと考えるべきであろう(Cが拘束される理由は全く存在しない。)。将来債権の譲受人となる者は、請負債権など特段の条件が付される可能性を、将来債権に関する譲渡の合意の際に考慮しておけ、ということであろう。そのような態度決定は、十分に支持できるものである。


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2013年6月 3日 月曜日

保証債務の書面性(東京高裁平成24.1.19判決)(金融法務事情1969号100p)

 保証債務については、書面でしなければ、その効力を生じないと規定されている。(民法446条2項)。なお、この点は連帯保証の場合も同様である。このため、色々な契約書の作成に際しては、契約者本人のほかに、保証人(連帯保証人)も同席してもらって直接、契約書に署名・押印をしてもらっている場合が通常である(最近、私が契約に立ちあった際も同様であった。)。銀行からの借入れの場合などはそのように行われているのが通常である。ただし、すべての場合に保証人に契約書への署名、押印が必要かというと、たとえば、保証人が手にけがしていて署名・押印ができない場合などに、代筆させることも可能である。民法446条2項は、保証人の責任が重いことから、保証を慎重にさせるために、保証契約に様式性を求め、保証人の保証意思が外部的にも客観的にもあきらかになることを求めていると解されている。

 このため、銀行借入れの場合などはあまり問題とならないようだが、個人事業主で、第三者保証が必要な場合、当に、リース契約や立替払契約のような場合は、契約書作成の場にその保証人が色々な事情で同席しない場合があり、後日、その保証人欄の筆跡が、当人のものではないということで、保証契約の成立が争われることになる場合がある。なお、リース会社は、筆跡の点を確認できないため、連帯保証人とされている人にに対して電話を掛けるなどして確認を行うというシステムになっているが、その確認電話に出た人がその当人かどうかが争われることになる。
 

 この事件も、電話機リースの事件で、契約者の妻が連帯保証人の責任を問われたケースである。第1審(東京地裁平成3.6.6)は、契約書の保証人欄の記載は夫の筆跡であるとの疑いが強いが、印章は保証人とされている妻のものであること、妻は事前にはリース契約を結ぶことに同意していたこと、リース会社の担当者からの電話確認につき、その掛けた時間や、電話の内容のうち、名前、生年月日、性別が一致するとして、保証人欄の押印は、保証人(妻)の意思に基づくものと推認できるとし、結局、保証人欄の署名押印は、保証人(妻)以外の者が行ったとしても、妻の保証意思が示されたものとして、保証の成立を認めた。

 
 これに対し、控訴審(本判決 金融法務事情1969号100p)は、保証契約書の署名が保証人の自著でないこと、印象も保証人の指示に基づいて押印されたと認める証拠はないこと、リース会社の担当者の電話メモも保証意思の確認内容として、「yes」と記載されているだけで、電話に出たものとの間の具体的にどのようなやり取りがあったのかの記載がないとして、保証人が出たのかどうかが疑念があるとし、上記電話の際に、保証人欄での署名押印に本人のものか、第三者に代行させたものかなどについての会話の記載もないとし、結局、保証人欄の記載が、保証人の意思に基づくものであると認められないとしている。
 

 この判決は、その後上告されたが、上告不受理、上告棄却で確定している(最三小H25.1.13)。
この判決は、事例判決だが、保証意思の確認の際(電話確認を含む)には、保証人欄への記載についても、同人の筆跡なのか、(契約書作成時にはその場にいなかったかどうかの確認、いなかった場合はどこで署名・押印を行ったのか、さらに、同人の筆跡でなければ、その理由の確認、さらに保証意思の具体的な確認などが必要とされよう(そのようにしても、完全ななりすましの場合は、見破るとができないかもしれない。)。

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