判例紹介

2012年11月26日 月曜日

錯誤の判例(東京高裁平成24年5月24日判決)

 錯誤についての裁判例が最近の判例雑誌に出ていた(金融・商事判例2012年10月15日号1401号36頁)。
 事案は、A銀行から2億5000万円の本件ビル購入資金を借り入れたBの債務を連帯保証したY(Bの実兄で医師 病院内科部長)に対し、A銀行から債権を譲り受けたX(整理回収機構)が、残元金約1億円、遅延損害金約5000万円を請求したというものである。Yの抗弁は、Yが連帯保証したのは、A銀行の行員甲、不動産仲介業者乙が、Aとともに突然、Yを訪ねてきて10億円する本件ビルを4億5000万円で取得できるので買得である(Bは先にA銀行に2億円の借り入れがあり合わせて4億5000万円の借り入れとなることになった。)、あるいはYには迷惑が掛からないなどとと話したため、Yは、連帯保証sを承諾したものであり、その毒器は明示されているとして、錯誤の成立を主張した。第1審(新潟地裁)は、Yが病院の内科部長という社会的地位からすれば、連帯保証の意味は十分認識していたとして錯誤の主張も認めず(錯誤があったとしても動機の錯誤にとどまる)。Yが控訴
  控訴審では、A銀行の本件ビルの担保評価につき、同行の評価では3億7500万円程度にとどまっていたなど、本件ビルの評価は10億円を大きく下回っていたという事実を認定したうえで、Yの連帯保証が、本件ビルの担保価値につき、A銀行の行員甲の発言その他を前提として誤信していたものであり、その誤信した事実を動機として連帯保証したものと認定し、その誤信事実はA銀行行員甲の積極的な発言によるものであってその剛毅は表示されているとし、要素の錯誤に当たるとした。
 
 融資金の返済についての連帯保証に関しては、連帯保証が主債務者が支払こtができない場合にその帆h層責任を負うものであって、主債務者の資力にういては、通常は同同人の動機の錯誤に過ぎず要素の錯誤とはなりえないものと考えられている。ただ本件のように収益物件であり、借入額も大きく、担保価値についtねお錯誤にそんざいについて、銀行側にも評価の誤りがあり(仮に担保価値が低いということを甲が知っていたら錯誤という構成より、A銀行の欺罔行為を認定する方が適切かもしれない。)動機の錯誤が表示されているという構成を認めてものと考えられる。そのあたりの事実の構成の仕方により、結論を分ける可能性があったと考えられる(なお、本控訴審判決は確定している。)。
 さらに本事件では、錯誤の点につき、A銀行からXへの融資金債権の債権譲渡につきBがこれに異議なき承諾し、Yもsれを了解したことが争点となった。この点について控訴審判決は、Yの承諾は、主債務の債権譲渡を了知しただけであり、保障債権の譲渡について、承諾したものではないとした。

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2012年11月21日 水曜日

懲戒処分の難しさ(最2小判平成24年4月27日)

 従業員が、「メイド喫茶のウエイトレスとの間でrトラブルになり、その後加害者集団から追跡や監視されるようになったなど((以下「被害事実といいます。」として、有給休暇を取り、さらに欠勤を続けている。さらにそれを理由として休職の申請が出された。会社は、被害事実があるかどうかを調査し、そのような事実は存在しないとして、休職の申請を認めず、従業員が結局40日の欠勤となったことから、就業規則に定める無断欠勤に該当するとして解雇となった。そこで従業員が解雇を争ったという事件がある。
 第1審は、従業員のいう被害事実は存在しないとして、欠勤に正当な理由がないとして解雇を有効としたが、控訴審は、従業員の欠勤は被害妄想などの精神的な不調によるものであるとして、就業規則中の「傷病その他のやむを得ない理由によって欠勤することは可能であり、適宜の方法で欠勤の旨を所属長に伝えているとして「無断欠勤」として扱うことは適当ではないとした。
 最高裁も控訴審の判断を是認し、当該授従業員の欠勤は何らかの精神的な不調が原因であるとするとともに、精神的不調のために欠勤を続ける労働者は、精神的な不調が解消されない限り出勤しないと考えられるとして、使用者に精神科医による健康診断などを実施するなどしたうえで、、休職などの処分を取り、その後の経過を観察したうえで対応を取るべきであるとした(判例時報平成24年10月21日号2159号142p)。
 このような理解しにくい理由で欠勤を続ける従業員は珍しくないようです。精神的不調なのか、あるい言動が理解しにくいだけなのか、それを調査するために精神科医に受診するように言うのも、決して簡単ではありません(そのことが名誉棄損だなどと抗議されることも考えられます)。結局、その家族の協力を得るなどして、説得を続け、経過観察を行って結論を出すということしかないようです(G)。

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