判例紹介

2013年10月26日 土曜日

コンビニでのクリーニング取次契約(東京地判H25.1.21)(判例時報2102号53p)

 コンビニでのクリーニング取次サービス契約を契約期間満了時に更新しなかったコンビニストア本部に対して、仕組みを共同開発した相手方への契約終了に伴う損失補償義務があるとされた事例である。

 コンビニでのクリーニング取次サービスが、新たなビジネスチャンスになると考えた事業主が、クリーニング受付ボックス、引き渡しボックス、専用のバッグ、従業員用のマニュアルなどの開発にコンビニ本部と共同で開発にあたったところ、予想通りの利益がでないことから、契約期間満了時にコンビニ本部から、契約終了を通告されたことから、その契約関係の存続などを求めて訴訟が提起された事件である。

 裁判所は、両社間の継続的取引関係の終了を認めたものの、損失補償を認めた。解除(契約不更新)を有効とする以上、損害賠償の問題も生じないが、共同開発事業の研究、ノウハウの蓄積が、コンビニ側に認められる(開発事業者側は、別のコンビニと同様の事業を始める場合は、そのコンビニに適合させるために最初から開発行為の時j行会派うt者などの点で利得がコンビニ本部側に集中する。)。

 このような当事者間に格差があるため、契約終了時における過去の成果の配分い著しい不平等が生じる場合は、民法248条(符合によって所有権を失った者に生じる償金請求権)、民法656条1条(委任契約における相手に不利な場合の解除n解除での損害補償の法理)から契約関係を合理的に解釈して、償金請求が可能であるとした。

 そっして、実際の償金学の算定では、さらに6年でその事業が終了する(原価償却と同様に考える)と考えられるとし、直近の年の利益の半分の金額の6年分を損失補償額と認定した。

 この損失補償を認めた判決に対する評価は分かれるであろう。この法理が認められる場合があることは考えられるが、どのような場合がこrねい当てはまるのか、主張する側はどの程度の事実を主張しなければならないのか、他方、相手方は原告の主張にどの程度対応していけばよいのかなど、とても難しい裁判例となっている。、
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2013年10月20日 日曜日

中古不動産の売買契約で、契約後地震により生じた毀損を売主が修復して引き渡すべき義務を履行しないことについて、売主に帰責事由がないとされた事例(東京地判H25.1.16)(判例時報2192号63p)

 東日本大震災の前に中古不動産の売買契約を結んでいたところ、その引渡し前に、液状化によって建物が傾いたケースで、引き渡し前に天災地変により生じた毀損について売主が修復して引き渡す旨の特約があった場合の問題である。
買主が、引き渡し受領後に、売主と仲介業者を相手に損害賠償請求訴訟を提起したという事件である。

 特定物に関する売買契約整理後、その引渡し前に生じた毀損については、債権者主義から買主が危険を負担するのが原則であるが、債務者(売主)が修復して引き渡すという特約があった場合である。この論点だけを考えると、買主は修復請求ができるだけであり、せいぜい修復義務の不履行がある場合にどの程度の損害賠償が可能かという問題になるかと思うが、何らかの事情で、売買代金相当額の損害賠償を求めたのであろう(判決文からは、震災後、買主からの問い合わせに対し、売主が毀損はないと答えたようであり(その後の市お調査で半壊程度と認定されている。)、その回答で買主が不信に陥って全面的な損害賠償請求となったのかもしれない。)。

 買主の請求は、売主に対して、①液状化の毀損を知りながらその事実を告げなかったのが債務不履行または不法行為となるとするもの、②予備的❶として引き渡しまでは手付解除が可能だったのにその機会を奪われたこおtによる損害、③予備的❷として仲介業者に修復費用を求めたものである。

 この裁判では、結局、売主が液状化による毀損を知っていたのかどうかの事実認定の問題になっており、それが否定されると(引き渡し時までその事実を知らなかった)、主位的請求、予備的請求❶は成立せず、仲介業者に対する予備的請求❷の成立も難しいことになる。

 判決文からすると、引き渡し後、売主は修復の申し入れをしたが、買主と売主との間で液状化に対する工事内容で合意に至らなかったようであり、売主の提案がそれなりに合理的なものであるとすれば、修復義務の存在を前提としつつも、その特約の前提となる売主の修復義務に関する債務不履行は認められにくいということで買主側の請求は全部棄却となった。

 実際は、液状化に対する合理的な修復方法に一定の合意があれば、和解などで早期に解決するケースなのではないかと思うが、将来に向けての完全な修補を求める側と低廉な相応な修補で足りるとする側との間での合意は難しいところであろう(なお、控訴審で和解が成立しているようである。)。
 

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2013年10月20日 日曜日

保証人が主債務を相続したことを知りながら保証債務を弁済した場合の主債務の消滅時効の援用(最2小H25.9.13)

保証人が、主債務を相続したことを知りながら、保証債務を弁済した場合に、その後、主債務に消滅時効が完成したとき、当該保証人は、主債務の消滅時効の完成とそれに伴う保証債務の消滅を主張できるかという問題である。事実関係は、A銀行の主債務者Bに対する貸付にCが保証人となっていたところ、Bが死亡し、Cのみが相続したというケースで、A銀行を代位弁済した保証協会がCに対し、訴訟をおこしたところ、Cが消滅時効を援用したというものである。第1審、控訴審ともにCの消滅時効の完成の主張を認めている(金融商事判例1426号19p以下)。Cの弁済が保証人としての弁済であって、相続した主債務者を弁済したのではない以上、主債務の消滅時効は別個に進行するということを前提としている(保証協会の主張する禁反言についても、そこまでには至らないとする。)。

 これに対し、上記の最高裁判決(同金融商事判例18p)は、Cは相続により、主債務者の地位と保証人の地位を兼ねることになり、保証債務の附従性に照らすと保証債務の弁済は、通常は主債務が消滅せずに存在することを当然の前提とし、主債務者兼保証人の地位にある者が主債務を相続したことを知りながらした弁済は、それが保証債務の弁済であっても、債権者に対し、併せて主債務の承認を表示することを包含するものといえるとした。したがって、保証人が主たる債務を相続したことを知りながら、保証債務を弁済した場合は、当該弁済は、特段の事由のない限り、主たる債務者による主たる債務者による承認として、消滅時効の中断理由となるとした。

 
 事実関係では、第1審判決でも、Cの単独相続については、他の相続人が相続を放棄し、CがBの相続財産である不動産を売却してその代金の中から弁済をしていると認定されている(この弁済を、AもCも、Cの保証人としての弁済と扱っていたと認定している。)。
 最高裁としても、確定した事実関係として、このようなCの弁済を保証人の弁済と扱うことから、その場合に主債務に対する関係で判示の理論構成となったものと思われる。弁済の場合、誰のどの債務に対する弁済なのかは、細かく言えば、領収書の書き方にも影響して、結構難しい問題であった(例えば、保証人の付されている債務への弁済か、求償権の発生する弁済かなど)。Cとしても、Bの相続人としても弁済かCの保証人としての弁済かについては、消滅時効の完成の問題もあって考え抜いた弁済であったと思われる。
 ただ、「包含関係」については、このケースで、仮にCが相続した主債務の弁済とした場合は、Cの固有の保証債務についての承認も包含しているというのかどうかが気になった。

 実務上は、個人がアパートを経営していて、子供がその連帯保証人の場合は多々存在するので、このようなケースは思った以上にあると思われる。また、夫婦で住宅ローンを連帯債務で組んでいる場合に、その一方が死亡した場合はどうなるのかといった点が気になる。

 もう少し大きな問題としては、このケースはCが主債務を相続したことを知っている場合であるが、法廷単純承認をした場合で、その場合について、単純に主債務を相続したことを知っている場合してよいかどうかという判断の問題(事実認定の問題かもしれない。)である。





  

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2013年10月 5日 土曜日

田原睦夫前最高裁判事の講演録(金融法務事情1978号)

本年4月に退官された田原睦夫最高裁判事の講演録が、金融法務事情1978号(2013年9月25日号)に掲載されている。「最高裁生活を振り返って」という演題のかなり長い講演録である。当然内容もかなりのバラエティーに富んだ講演だったようである。その中で、田原前判事の最高裁判決を書かれる際の意見(法廷意見、補足意見など)を『書かれる際、あるいは「不受理」となって最終的には意見としては書かれていないが、議論をしているものが存在する点など詳しく紹介されている。特に、判決の射程距離に関しては、かなり意識して短く扱われるように補足意見を書かれるなど注意されているようである。また、そのことにも関連するのであろうが、われわれが絶えず意識させられている調査官による判例解説についても、それはあくまで調査官の個人的意見であり、書かれている内容についても「ん?」と感じることがあるということであった。

 
 実は、同じ金融法務事情の田原前最高裁判事の講演録のすぐ後に、民法909条4号但書きが憲法14条1項違反するという平成25年9月4日最高裁大法廷決定が特報として紹介されていた。当然だが、同決定には田原前最高裁判事は関与されていない。婚姻外子の相続分の規定に関する違憲の問題であるので、裁判自体は個別の事件であるが、事例はんだんというわけにはいかない。また、従前の同規定を合憲とした判例も相当数存在するので、どのような論旨の進め方になっているのか興味深く読めた。法律婚の尊重の問題と婚姻外子の相続分の不平等について、立法府の合理的裁量の幅がどの程度のもであるかについて最高裁の判断を示したものであるが、田原前判事の講演録を読んだ後では、そのあたりの書き方が非常に興味深く読めた。

 法廷意見でも補足意見でも遡及効の問題に重ねて論及されているが、やhり実際の扱いとなるとどうなるのか、分かりにくいところがある(本山敦教授が、さっそく具体的な問題を出されている。金融商事判例1425号2013年10月1日号 基準時となる平成13年7月前に遺産分割がされた後に、新たに遺産が発見された場合をどうするか)。

 同じ問題は、相続開始時に当然分割とされている銀行預金の場合がある場合にも生じる。相続財産が、不動産のほかに2000万円の普通預金の場合、婚姻内子A、婚姻外子Bのみが相続人の場合に、Aが銀行から1200万円の払い出しを受けた場合、その後BがAに対し、差額分の200万円請求する場合である(AB間で遺産分割の協議がないので可能だと思うが、その場合は不当利得ということで地方裁判所の管轄となる。)。そして、不動産についての遺産分割はどうなるのであろうか。、
 金銭債権については、相続開始時に当然に分割されているという考え(判例実務)に立つと、金銭債権と他の相続財産では、取扱いが違うことになりかねないが、それで、相続人が全員納得してくれるかはかなり疑問である。

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