判例紹介

2013年5月25日 土曜日

弁護士会照会と銀行の守秘義務(東京高裁平成25.、4.11)

 弁護士法23条の2に基づく銀行への照会に対して、銀行が守秘義務(預金者の秘密)を理由に拒否した場合に、その弁護士ないしは依頼者と銀行の関係はどうなるのか、という点に関する判例である。原判決(東京地裁平成24.11.26)は、この点で、次のような見解を示して、注目を集めた(このブログでも紹介した。)。
 弁護士法23条の2に基づく照会は、弁護士会が個々の弁護士からの申し出を受けて、弁護士会がその要件を検討したうえで、各種機関に対し照会するものであり、照会先は弁護士会に対する回答義務を負っていると解されている。そしてその性質は公法上の義務であると理解されている。ただし、銀行は他方、預金者の秘密を守る義務があり、弁護士会からの23条照会を受けたとしても、その義務が当然に重いといえいるかどうかは、慎重な検討が必要である(ここまでは、ほとんど争いのない共通の理解である。)。

 このことを前提として、原判決は、この事案(債務名義を種痘した債権者が、債権差押さえのために、債務者の預金の有無を調査しようとした事案)において、回答義務が優先するとして、銀行に弁護士会への回答義務があるとし、それを前提として、当該弁護士に、行政訴訟法4条の「公法上の法律関係に関する訴えの利益」があるとしたものである。本来、弁護士会と銀行の間の公法上の権利義務関係の確認につき、これを認めたという点画期的だった。
 控訴審は、従来の考え方(弁護士と銀行の関係からすれば、行政訴訟法4条の適用はないとして、この点を否定した。

 次に、原判決は、このケースで銀行に弁護士会に対する回答義務があることを前提にすると、当該弁護士に対する関係で銀行の不法行為が成立するかどうかの点について、不法行為の前提となる故意・過失の存在につき、23条の回答義務と守秘義務の優劣に関する見解も一致していない以上、故意過失の認定はできず、不法行為は成立しないとしていた。
控訴審は、23条違反が、弁護士会に対する公法上の義務であり、弁護士に対する義務ではない以上、弁護士に対する関係で銀行の違法行為は存在しないとし、故意過失についても、守秘義務と23条違反の関係についえtの最高裁判決もでていない現時点では、認めるこてゃできないとしてその成立を否定している。

 確かに、守秘義務と23条違反について一般的な優劣関係を確定させることはできないと考えられる(その意味では、23条に回答しないというとが、義務違反となるわけではあるまい。ただ、本件のケースは、債務名義がすでに確定した債権者が債務者の預金の有無を調査しようというものであり、預金者の秘密の保護が重要なものというわけではない。現行の強制執行制度上、預金口座の特定が必要であり、そのための債権者の手段の確保という問題と、債務名義を取得されている債務者の預金口座の秘密の保持が、やはりh「同程度守られるべきものなのかどうかという点の判断がもう少し考えられるべきではないかと思われる。この点は、立法的な解決が図られるべき問題なのかもしれない。

投稿者 あさひ共同法律事務所 | 記事URL

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