判例紹介

2013年7月20日 土曜日

耐震性に問題がある建物の明渡し請求と正当事由(東京地判H25.1.25)

 古い建物なので耐震性に問題があるので、取り壊したいとして家屋の明渡しを求められるケースがある。建物は朽廃しない限り、家屋賃貸借契約は終了しないということで、従前はこの「朽廃」という言葉の実態について色々な主張がなされたが、なかなか朽廃が認められたことはなかった。、
 

 そこで、次に、旧借家法1の2の明け渡しを求める「正当事由」の有無が争われるようになったが、正当事由が認められる例はすくなかった。建築基準法違反や消防法違反があり取り壊しが求められるというような理由で正当事由の存在が認められたことは無く、正当事由の要素の一つとしてまでは考えられていなかったように思われる。
 

 耐震制に欠ける場合も、消防法違反や建築基準法違反の場合と同じような判断かと思っていたが(それだけでは正当事由にならない)、なかなかその点に触れた裁判例にを見つけることができなかった。この判決東京地判決ℍ25.1.25(判例時報2184号57P)は、建替えの必要性に関連するものとして、正当事由の判断要素に当たるという点を認めた事例である。

 事案関係は、東京の3階建ての建物(昭和49年新築)の1階の1部を昭和58年に歯科診療所用として賃借した賃借人に対し、賃貸人(承継人)が、その明け渡しをもt目たもので、賃料は月額19万円となっている状態で、平成22年(賃貸借開始後28年経過時)に明け渡しを請求。その際に、耐震基準をクリア指定おらず、建物が築後40年近くになっているおり、建替えの必要性を主張(立退料として、6000万円(うち営業保証4000万円)の提供を主張した。

 裁判所は、耐震性に問題のある建物を取り壊し、新たな建物を建てることは合理的であるとし、新たな建物計画の合理性を認め、建物明け渡しの必要性を認めた。他方、賃借人に当該建物使用の必要性(歯科として同建物で相応の収入を得ていることを認定)を認めたうえで、立退料による補完が認められると判断し、当該歯科医師の売上を年間3600万円として、営業休止補償証額を1682万とし、最終的な金額を5800万円程度認め、立退料総額を6000万円とすることで、正当事由の補完を認めている。

 無論、事例判決だが、耐震性に問題がある建物につき、その取り壊しと新築する建物の具体的計画があることで建物取り壊しの必要性が肯定され、相当な立退料の提供により正当事由の補完を認めた裁判例であって結構興味深い。

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2013年7月15日 月曜日

専門家責任(金融法務事情の金法判例digestから)

 判例金融法務事情(1973号2013年7月10日号)の金法判例digest88P以下に、隣地との境界について、作成されていた実測図を信じて土地を買ったところ、隣地の所有者との間で境界が問題となり、敗訴した土地取得者が実測図を作成したÝ土地家屋調査士に対しし損害賠償を求めた事件(東京地判決ℍ24.4.12)は、当該実測図が周辺土地の関係者の立ち合いの下で作成されたものであって、作成の過程でÝに過失が認められないこと、本件実測図が、最終に境界立会を作成する前提として、関係者に送付されたものであって、xのような第三者に対して責任を負うことはないとした。

 
 次に、弁護士が作成した書面(マンションの滞管理費などの滞納日費の有無とその額について書かれた書面を信じて、そのマンションを取得した者に対する不動産取得代金を融資した金融会社が、滞納費の内容が事実と異なるとして、作成した弁護士に対し不法行為に基づく損害賠償を求めた事件(東京地判ℍ24.5.17)について、同判決は、弁護士が作成した同書面は、依頼者に対する関係で作成された書面であり、第三者への開示を予定している書面ではないこと、依頼者が、この書面を当該不動産の担保価値を証明する書面として使う意思がなかったこと(たまたまxが知ったに過ぎない)、x(金融会社)にしても、金融の専門家として、弁護士の作成したそのような文書のみを信じて融資を行ったとは考えられないことなどを理由として、賠償義務を否定している。
  

 弁護士として意見書の作成を求められる場合はしばしば存在する。そのような場合、意見については、まさに意見なので、よほどのことがない限り問題とはならない。しかし、事実証明の要素が大きい文書だと、確かに少し問題が出てくる場合がありうる。ただ、保険会社が使う調査会社の報告書や企業情報などは、第三者への開示が禁じられており、第三者からその誤りについての損害賠償請求を逃れるようになっている。

 この辺り、つまり、何の目的で、どの程度の詳細な報告書を作成するかは、ますます問題となるように、思う。

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2013年7月14日 日曜日

土地区画整理事業内土地の売買契約と瑕疵担保責任(最2小判H25、3、22)

 土地区画整理事業内の土地の売買契約後に、その土地に整理組合から賦課金が課された場合に、買主が売主に瑕疵担保責任(民法570条)を問うことができるかという問題である。整理組合が費用の捻出のために販売予定であった保留地の売却がうまくいかず、売買された各仮換地に賦課金を課した。この場合、契約時に仮換地の売主が賦課金がすでに発生していたとすると、それにつき善意の買主が瑕疵担保責任を追及できそうである。発生の可能性があったにとどまる場合が問題となる。「賦課金発生の可能性」をもって瑕疵といえるかどうかというこおtになる。可能性という言葉は、実現の具体性の有無によって区別をつけるということは考えられ、その発生の可能性が高い場合は、その瑕疵が存在していたという場合と同じように扱うこtが可能である(つまり瑕疵性を肯定する。)。

 ところが、その可能性にとどまる場合はどうであろうか。賦課金の発生時期は、契約成立後であり、後発的な事由については、買主が負担すべきものであって売主が負担すべきものではないと考えると、可能性にとどまる場合は、買主がふたんすべきリスクであって瑕疵に当たらないと考えられる。
 

 最高裁判決はそのように考えて、賦課金発生の可能性は意パン的な具体性を帯びていたとは言えず、抽象的なものにとどまるとし、その場合は、売主は瑕疵担保責任を負わないとした。
 

 この判断は、後発的な理由(例えば、隣地にマンションが建ったことによって景観、日照の瑕疵が生じたというような場合に、隣地のマンション建築の具体化の程度などで結論が異なる場合があるkとを示している(むろん、瑕疵担保、説明義務違反などいろいろな方法が考えられる。)

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