判例紹介

2013年10月 5日 土曜日

田原睦夫前最高裁判事の講演録(金融法務事情1978号)

本年4月に退官された田原睦夫最高裁判事の講演録が、金融法務事情1978号(2013年9月25日号)に掲載されている。「最高裁生活を振り返って」という演題のかなり長い講演録である。当然内容もかなりのバラエティーに富んだ講演だったようである。その中で、田原前判事の最高裁判決を書かれる際の意見(法廷意見、補足意見など)を『書かれる際、あるいは「不受理」となって最終的には意見としては書かれていないが、議論をしているものが存在する点など詳しく紹介されている。特に、判決の射程距離に関しては、かなり意識して短く扱われるように補足意見を書かれるなど注意されているようである。また、そのことにも関連するのであろうが、われわれが絶えず意識させられている調査官による判例解説についても、それはあくまで調査官の個人的意見であり、書かれている内容についても「ん?」と感じることがあるということであった。

 
 実は、同じ金融法務事情の田原前最高裁判事の講演録のすぐ後に、民法909条4号但書きが憲法14条1項違反するという平成25年9月4日最高裁大法廷決定が特報として紹介されていた。当然だが、同決定には田原前最高裁判事は関与されていない。婚姻外子の相続分の規定に関する違憲の問題であるので、裁判自体は個別の事件であるが、事例はんだんというわけにはいかない。また、従前の同規定を合憲とした判例も相当数存在するので、どのような論旨の進め方になっているのか興味深く読めた。法律婚の尊重の問題と婚姻外子の相続分の不平等について、立法府の合理的裁量の幅がどの程度のもであるかについて最高裁の判断を示したものであるが、田原前判事の講演録を読んだ後では、そのあたりの書き方が非常に興味深く読めた。

 法廷意見でも補足意見でも遡及効の問題に重ねて論及されているが、やhり実際の扱いとなるとどうなるのか、分かりにくいところがある(本山敦教授が、さっそく具体的な問題を出されている。金融商事判例1425号2013年10月1日号 基準時となる平成13年7月前に遺産分割がされた後に、新たに遺産が発見された場合をどうするか)。

 同じ問題は、相続開始時に当然分割とされている銀行預金の場合がある場合にも生じる。相続財産が、不動産のほかに2000万円の普通預金の場合、婚姻内子A、婚姻外子Bのみが相続人の場合に、Aが銀行から1200万円の払い出しを受けた場合、その後BがAに対し、差額分の200万円請求する場合である(AB間で遺産分割の協議がないので可能だと思うが、その場合は不当利得ということで地方裁判所の管轄となる。)。そして、不動産についての遺産分割はどうなるのであろうか。、
 金銭債権については、相続開始時に当然に分割されているという考え(判例実務)に立つと、金銭債権と他の相続財産では、取扱いが違うことになりかねないが、それで、相続人が全員納得してくれるかはかなり疑問である。



投稿者 あさひ共同法律事務所

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