判例紹介

2013年8月15日 木曜日

借主が反社会的勢力の場合の金融機関と信用保証協会間の保証契約と錯誤

 銀行などの金融機関が信用保証協会の保証を受けて融資し、その後、融資先が反社会的勢力であることが分かり、その後支払いが延滞したことで、保証協会に保証履行を求めた場合に、保証協会が、反社会的勢力に対する保証でありに無効を主張することができるか、という問題で、最近、東京地裁で相反する判決が出されたとして紹介されている(①東京地判平成25.4.23 ②東京地判平成25.4、24金融法務事情1975号94頁)。

 ①判決は、平成20年12月から22年8月までの合計1億3000万円の融資、②判決は、平成20年8月から22年8月までの合計8000万円の融資ということぐらいで(被告はいずれも同一)、事実関係に大きな違いはない。

 ①判決は、平成19年6月に発表された政府の犯罪対策閣僚会議幹事会の企業が反社会的勢力との一切の関係を断つことを基本原則とする企業が反社会的による被害を防止するための指針について」(基本指針)、信用保証協会の公的な性格などを根拠とし、信用保証協会の錯誤の主張を認めた(判決文からは、要素の錯誤と判断された理由については、指針発表後の保証については、合理的意思解釈として、主債務者が反社会的勢力関連企業にに該当するときは契約をしないことが、当然の前提となっているとしている。

 ②判決は、法律行為の要素の錯誤の該当性につき、主債務者の属性(反社会的勢力でないこと)は、保証債務の法律行為といsての要素ではないとし、そのうえで、動機の錯誤(重要性-相手方に明示されていること、因果性)の判断に際し、主債務者が反社会的勢力でないことが保証の際の前提であるというが金融機関に示されていたというkとはできないとして、信用保証協会側の抗弁を認めてなかった。

 保証契約において、主債務者の属性をどの程度前提とするかどうかは、価値判断のわかれるところである。特に反社会的勢力であるかどうかは、融資時(保証時)には容易には分からない。細かい場合分け(金融機関の調査義務の程度を、融資先との関連性の深さにより、操作する-新規なのかどうか、持ち込みがどうか、金額など)により結論を異にすることは考えられるかもしれない。また、反社会的勢力の根絶という点をどのくらい評価するか(保証を認めることで結果的に反社会的勢力を支援することになる)、によっても別れる。

 錯誤という一刀両断的な解決が適切かどうかも問題となるであろう(金融機関、保証協会双方とも被害者と考えられる。)。
今後の裁判例も積み上げられていくと思われる(同種事案裁判例として、大阪高判平成25.3.22金融商事判例1415号)。


投稿者 あさひ共同法律事務所

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