判例紹介

2014年3月 2日 日曜日

司法書士の訴訟活動と弁護士法72条、民訴法54条(富山地判H25.9.109)(判例時報2206号111頁)

事件は、訴額が1000万円を超える過払金請求事件である。司法書士Aは、原告の過払金請求訴訟の訴状や準備書面などの書面を作成押印し(準備書面はAの事務所からファクシミリで被告代理人に送信されている。)。期日には原告を出頭させ(Aは傍聴)、弁論準備期日には裁判所が傍聴を許さなかったようである(和解はしないように原告に指示していたようであリ、その点は判決文に明示されている。)。最終的に原告には弁護士が付いていないが、裁判所は当事者の主張などについて、かなり詳細な事実認定を行っている。
 
 

 被告は、Aが原告の実質的な代理人であるとして、弁護士法72条違反であり、弁護士代理を定める民訴法54条1項により訴え却下を求めていた。なお、原告は、Aの訴訟追行という認定がされた場合を考え、Aの訴訟行為を追認している(追認が有効かどうかも争点となっている。)
 

 裁判では、弁護士法72条と民訴法54条1項違反が問題となり、裁判所は、弁護士法72条の趣旨は、専門的法律知識に基づいて作成される訴状答弁書などの書面の内容については司法書士の権限の範囲外であるとし、さらに、Aは過払金返還請求訴訟の依頼者が過払金に関心があり、そのプロセスには関心が低いことに着目し、地裁事件では弁護士法72条いはんとなることを認識しながら、依頼者からの依頼を受けていたとし、本件訴えが民訴法54条1項に違反し無効であるとするとともに、Aを送達場所及び受取人とする届出も無効とした。
 

 また、原告による追認についても、受任者が弁護士でないことを知りながら委任した当事者が追認を認められないことの不利益を受けることを甘受することも適切であるとした。

 この裁判は、控訴が無く確定している。原告とすれば、過払金の一部に消滅時効が完成する部分があった場合に不利益を受ける結果となるが、権利自体がまったくなくなるわけではないので、弁護士を付けて改めて訴えを提起することは可能である。

 この司法書士がどのようなパーソナリティの持主人なのかは不明であるが(和解に応じない姿勢を示すなど)、判決文の記載からは、富山地裁では有名人だったのであろう。
 


投稿者 あさひ共同法律事務所

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