判例紹介

2013年3月 7日 木曜日

賃借人からの解除(東京地判平成24年6月26日)

 不動産賃貸借契約の賃借人から行う解除は、結構微妙な問題である。家屋賃貸借契約における賃貸人からの解除は、信頼関係破壊の理論に基づいて単純な債務不履行では解除はできないとされている。では、賃借人から行う解除の場合はどうであろうか。
 

 信頼関係破壊理論は賃借人保護という要素が大きいと考えられる。ただ、民法は賃借物の一部が滅失した場合はその残存する部分のみでは賃貸借の目的を達しない場合に限って賃貸借を解除できるとしているばど(611条2項)、一部の債務不履行があってもそれだけでは解除できないという立場に立っていると思われる。

 そこで、賃借人は、賃貸人にどのような債務不履行があれば賃貸借契約を解除できるかという問題は結構大きな問題となる。
 

 それは、賃借人からの債務不履行解除が認められない場合は、単なる中途解約の申し入れということになり、中途解約の場合は、例えば6か月間の予告期間を要するとか、敷引特約がある場合は、その分の敷金が差し引かれるからである(債務不履行解除が認められる場合には、敷引特約は働かないと考えられている。)。

 そうなると店舗や事務所などの場合は、1年程度の賃料分が返還されるかどうか、という結構大きな問題となることになる。
 

 東京地判平成24年6月26日(判例時報2171号62頁)は、東京新宿のビルの地下1階を賃借したテレマーケティング業者が日常的にコバエが発生しており、それが賃貸人の賃貸借契約上の債務不履行に当たるとして、経済的損害、無形の損害についえの損害賠償責任が認められたがそれに基づく解除は認められかったケースである。
 

 この裁判例は、日常的なコバエの発生の事実、その発生原因がビルの汚水槽の機能や構造にあるとの事実を認めたうえで、従業員が不快感を持つとともに、、事務に集中できない、コバエ対策のために総務担当の事務員がゴミの処理について従業員に注意を促す広報に従事するなどの余分な業務が増える、窓が開けられない、外部から来た客の不快感に苦慮するなどの事実を認めて、本件賃貸借契約の目的に沿った賃借人の利用が一定程度背言されたとし、賃貸借契約上の賃貸人の債務不履行の成立を認め、損害としてコバエ発生の調査費用、コバエ発生のために退職者がでたことからその補充のために増加した労務費の一部いついても、損害を認め、さrない無形の損害(上記従業員の不快感など財産上の損害と異なる「数理的な算定のできない無形の損害」を認めている(ほぼ1か月の賃料と同額)。

 このように、賃貸人の債務不履行は認められ、一定程度の損害の発生は認めたものの、信頼関係が破壊されていたということはできないとしたものである


投稿者 あさひ共同法律事務所

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