弁護士ブログ(日々の出来事)

2019年11月23日 土曜日

今週の1週間(11月18日から22日)

 11月18日(月曜日) 朝(9時)から12時までの日弁連の委員会(ITWG)。商事法務研究会でのIT化検討会もいよいよ来年には意見書が出される見込みである。その時点で、日弁連も研究会の意見書に対する意見書を出したい。その前提となる意見書原案(各単位会や日弁連の関連委員会への意見の提出を求める対象となる案)は、ITWGが作成したものを執行部で検討してもらうことになる。
 このため、当ITWGでの議論が重要となる。私の担当は、「特別の訴訟手続の創設」でここは大きな議論があるところである。この問題は本来IT化とは関係がないというそもそも論がある。迅速化の問題ではあってもIT化とは関係がないという議論だが、さらに、迅速化という意味ではこういうダブルトラックという小手先の議論ではなく、本来的な問題(裁判官の数が少ないなど)の制度の本質に迫る問題の解決が優先すべきであるという議論である。裁判の職権主義的な進行が強まる。人証調べが増々少なくなる、その結果、ラフジャスティスに陥るなどの議論がある。
 他方で、訴訟契約等の合意を排除することは現在の民事訴訟法上でもできないので、それを適切な範囲で立法化することがすべて認められないとすることはできないという意見もあるところである。
 福岡地裁では、一時迅速トラックなどの検討がされたことがあり、また、現在の裁判で無駄な争点整理期日だったのではないかと感じる期日があるのは間違いない。委員会では、新たに提案される乙案(当事者の積極的合意により開始する)を採用した場合に、通常訴訟への移行申立てを無理由に認めることは相当かという疑問が出された。
 私は、この制度の採用には賛成だが、甲案はもちろん、乙案にも賛成できないという意見である。この手続に入るには双方代理人の積極的な同意が必要だと思うが、それでも、通常訴訟への移行の自由は確保された方が良いと考えている。これには、双方がこの手続の利用に積極的に同意しているのに、後に理由が無く移行の自由を認めることに論理的な問題があるのではないかという指摘がされている。確かに少し説明は難しいが、訴訟自体が十分な証拠開示が制度的に認められていないことを前提とすると、その後の訴訟の展開が十分に予測されるということが明確でない以上、前提が変わる(しかもそのことは訴訟の場では往々にして生じる)ということを前提とすると、自由な移行も認められて良いと考えている(手続としては、「理由を示して」移行申立ができるとすれば足りると思っている。)。
 私自身が新制度の導入により、直ちに現在の訴訟の体系が変わることになるとは思っていない。特別の訴訟手続による場合でも、事件番号が変わるわけでもないし、そこでの期日は、本来の訴訟の争点整理の期日として運営されるものである。
 実際の運用は、双方代理人による事前のこの手続によるとの合意成立の場合はほとんど存在せず、第1回期日を含めて、双方からの主張の骨子が出されて時点で、裁判所からこの手続きの利用の打診がされ、双方代理人がこれに応じた場合にこの手続きに移行するという使い方が普通になるのではないかと思う(双方代理人とも争点と人証のめどがついていれば、これに応じる可能性はある。)。この手続きにのれば、その後3回の争点整理期日、半年後の集中証拠調べといった辺りは概ね決まるので、双方代理人裁判所とも、それに向けた準備はできるだろうし、その後の期日も準備書面が出されないなどの無駄な期日にはならないだろうし、人証調前に和解のための期日が空転するということも少なくなると思われる。もし、途中で通常の手続きに移ったとしても、それまで提出された準備書面や証拠申出はそのまま維持されるので、充実した争点整理が行われてきたのであれば、それはそれで役にたったということができるように思う。この意味では、新たな訴訟手続の創設は、困難事件とはいえない普通の事件について、レディメイドの具体的な計画審理案を法律で定めてくれたというものになるように思う(個人的には、乙案でも固すぎると思うが)。
 4時過ぎに事務所に戻り、少し作業をして今日はおしまい。

 11月19日(火曜日) 午前中は、弁論(初回)が1件。当方は被告。訴え提起よりかなり以前から相談を受けていた事件だったので、結構詳し目の答弁書(16p)を出していた。擬制陳述にしなかったのは、裁判所が答弁書をきちんと読んできているのかを確認するためである(実は相被告が遠方のため、擬制陳述になるのは分かっていた。)。初回で少し、裁判所、原告と訴訟の大まかな方向性について議論ができたので(裁判所もこちらが考えている辺りが争点(主要事実ではなく、判断の基本となる考え方の筋の問題)が重要であるという点で共通の理解ができている様子が窺えたのでとりあえず、初回の目的は達したと思う。
 その後、事務所で打ち合わせ。22日(金曜日)に期日の1週間前になる事件があり、22日に提出する準備書面の作成のために必要な打ち合わせとなる(前の週に少し書き始めていたので、それに書き加えることになる)。
 午後は、労働委員会へ行き、審査事件の調査期日。いよいよ、労働委員会での最後の仕事となる。引き継ぐ委員とともに、人調調べ期日の決定などを行い、解決に向けての和解の方向性についても、双方とも議論する。1時間30分ほどで終了。
 その後、ロータリーの事務局で、地区大会のパンフレットなどの打ち合わせを行い、事務所に戻る。その後は、少しだけ作業を行い、今日はジムに行くことにする。

 11月20日(水曜日) 今日は事務所にこもって22日提出の準備書面の続きを書く。訴訟の骨組みに係わる部分なので慎重かつ分かりやすいものにしたいと思うが、昨日の打ち合わせの際に受け取った資料では、少し不安定なところがあり、微妙な構成部分が出てきたように感じる。とにかく、一日かけて第1案を作り上げる(事務局に渡す)。

 11月21日(木曜日) 朝、家庭裁判所へ。遺産分割協議事件。実質的には4回目の期日だが、まとまりそうな雰囲気になってきた。年内にある次回期日は終わりそうである。
 事務所に戻って少し作業をやって、午後は、事務局から返された準備書面に手を入れる。そうしているうちに、九弁連の民事裁判に係る連絡協議会に行く時間になる(1時間ほど遅れた)。4時からは、福岡高裁との控訴審における協議会。弁護士会からの出題で、「裁判所から見ての控訴理由書、答弁書での問題点」という出題だったが、一部認容判決の場合での控訴の趣旨の書き方が誤っているものが多いという指摘があった。確かに一部認容判決の場合についての控訴の趣旨の書き方には良く分からないところが多い。書式集を見ても詳しい説明はない。また、本訴・反訴が錯綜している事件など、要件事実マニュアルを読んでももう一つ分からないことがある。裁判所は、控訴理由書を読みながら控訴の趣意を再検討するようなので、控訴理由書を提出した段階で、裁判所から釈明の連絡が入ることになるかもしれない。なお答弁書については、原審が認めているが、必ずしも決定的ではなく、控訴審で判断が変わりうる場合には、その点もきちんと触れて欲しい(控訴理由書には記載が無くとも)と言う話があった。

 11月22日(金曜日) 来週の25日は1日中、日弁連の民事裁判員会で福岡にはいないので、午前中は真面目に作業を行う。今日提出の準備書面や証拠ついてもなんとか間に合ったという感じである。午後は、県弁護士会へ。福岡県弁護士会では、以前は会報(あるいは会誌 毎月の月報とは異なる)といものを定期的に発行してきたが、このところ、途絶えていた。平成が終わり令和になったことで、改めて福岡県弁護士会の会誌を作るという。全部で12くらいの項目で作るということだが、平成を振り返ってというこ徒になりそうである。
 ほとんど何も考えていなかったが、民事裁判全般について、3万字程度と言うことである(家事も扱うということなので、もう少し、いや、かなり増えそうである。)。2020年4月までに第1次原稿を挙げて、それを検討して、2021年3月の年度内には刊行したいということのようである。結構厳しい。刑事裁判もそうだが、民事裁判の場合は、福岡県だけの動きではなく、色々な法制度の変更を書きながら、福岡県の取組みについても触れるということのようで、迅速化からIT化まで触れる必要があるかもしれない。日弁連の動きはともかくも、福岡県弁護士会の動きをどれだけトレースできるかは、改めて考える必要が出てきそうである。
 弁護士会からの帰りに、福岡市美術館でギュスタブ・モロー展を見に行ってしまった。これ今週はお終い。今日もジムに行こう。




投稿者 あさひ共同法律事務所

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