弁護士ブログ(日々の出来事)

2013年1月27日 日曜日

訴状の記載について

 先週、私が所属する日弁連民事裁判手続委員会での話題の一つである。
 

 訴状の記載について、相当以前は①時系列に基づく記載だったものが、司法研修所での要件事実教育による②要件事実を中心とした記載(すなわち主要事実のみの記載)するものが、おそらく30期以降の者を中心となり、その後、主要事実だけの記載では紛争の実態が分から無いという批判を受けて、主要事実のほかに、③背景事実などの記載を書き分けるというものが出てきて、その後の法科大学院修了者については、前期修習が無くなったことからかそうかは不明であるが、楊家事実教育が十分に身についていないのか、④時系列的な記載が増えているという話である。
 

 訴状を受け取って認否をする立場では、②の主要事実の記載のみの場合が一番楽である。③背景事実の記載される訴状の場合は、記載されている背景事実が、明らかに認否の必要のない間接事実なら問題がないのであるが、重要な間接事実(準主要事実)や本当に認否の必要がないと思われる事実などが一緒に記載されている場合があり、どこまで認否をする必要があるのか悩む場合がある(裁判所は、訴状の段階なので、事実関係がわかっていないことから、とりあえず、「必要だと思うところは認否をしてほしい」ということが多く、結局認否することを強いられる場合が多い。

 ところが、原告代理人は、背景事実を書いていることからか、認否のしやすいような記載ではなく、何行目から何行目まではおおむね認めるというような変な記載となるうえ、これに要する時間コストは相当無駄となる。他方、後で重要な間接事実についての認否がないことに気が付くことになる場合もある。

 ④時系列的な記載では、全般的に訴状が長くなっていることもあって、記載内容からは、どれが主要事実なのかどうかがわからないことがあり、結局、本当に主要事実かどうかも分からないまま、結構細かな点まで認否を行うことになる。あるいは途中で投げ出して、すべて(あるいはこの点を除き)否認ないしは争うというような非常にあいまいなi記載になってしまう。

 どのような訴状の記載が良いのかどうかは難しい問題である。相手にうまい答弁書を書かせないことを狙っている向きもあるかもしれないが、判断者である裁判所は、きちんとした答弁書が出され、双方の主張をそろえた上ででないと、判断をしないのであるから、答弁書の書きやすい訴状をお願いしたい。

 きちんとした答弁書が出されない限り、原告も答弁書の記載に対する有効な2の矢、3の矢を放てず、訴訟に無駄な時間を費やすだけで、解決が遅れるだけのことと思う。是非とも答弁書の書きやすい訴状をお願いしたいと思っている(そうなると、さらに認否反論のし易い準備書面をお願いしたいということになる。)。
 

 


投稿者 あさひ共同法律事務所

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