弁護士ブログ(日々の出来事)

2013年1月27日 日曜日

裁判員裁判が終わりました。

 先週、裁判員裁判が終了。タクシー強盗の強盗致傷罪と強盗罪の併合罪で、公訴事実(起訴状に記載されているそれぞれの犯罪の構成要件に該当する具体的な事実)には争いがなく、量刑が主たる争点となる事件だった。結論はここでは書かないが、いくつかの感想を。
 
まず、主任弁護人(62期)と話をして、量刑についての主張(示談も成立しており、傷害の程度も軽いなどを理由として、執行猶予を付けるべきだという主張)を早期に出して裁判員に、執行猶予の要件の有無を考えながら尋問を聞いて貰うよう求めること、このためには、弁論の段階ではなく、冒頭陳述の段階から、意識的に執行猶予の要件を述べておくということとした。問題となったのは、行為の違法性、危険性の大小に関する点である。示談の成立や本人の反省も大切であるが、やはり行為自体の危険性の評価が大きな問題となると考えていた。被害者が証人となったため、反対尋問で行為の客観的事実の面で反対尋問を行おうと考えていた(裁判員にその時の状況が具体的にイメージできるくらいの内容まで明らかにする必要があると考えていた。)。しかし、罪体に争いは無いので、細かい点(具体的には、凶器を「のどの付近に押し当てた」という事実には争いがないが、凶器がネクタイの結び目にあたっていたという被害者の証言に対して10センチくらいは離れていたのではないかという違い)は量刑上大きな違いはないということなのか、裁判所の訴訟指揮もあり、あまり詰めた尋問にならなかった。個人的には、裁判員が余り細かな事実認定にこだわることは、評議の遅れを生じるなど問題があると思うが、他面、刑事事件の場合、ある程度具体的な事実をイメージできないと、その行為の具体的な危険性の大小の判断はできない(その結果、量刑に次Atの意見も言いにくい)のではないかも思う。
 そのあたりはバランスの問題なのかもしれないが、今後のやり方を考える必要があるかもしれない(「凶器の位置はこれくらい離れてたのではないか」という分かりやすい質問にしてほしい、と言われた(前提となる少し細かな事実を質問して確定させたうえでないと、弁護人の主張を証人にぶつけるだけで、証人からは違いますと簡単に否定されるだけのような気がする。)。
 
 なお、冒頭陳述で、事件についての検察官の見方(遊ぶ金欲しさにタクシー強盗を繰り返した凶悪犯罪という主張)に対する弁護側の見方であるが、なかなか思いつかない。◎◎ではない(たとえば「遊ぶ金欲しさではない」)という否定の形での主張は可能だが、それでは裁判員には理解して貰えないと思う。積極的に◎◎(という事件だという必要があると思うが、実際にどのような構成にするかはかなり難しい。次に、裁判員裁判事件を担当することがあったらまた考えてみたい。


投稿者 あさひ共同法律事務所

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