2014年3月 1日 土曜日

土地の売買契約で境界画定書、確定実測図の交付が売買代金の支払いと同時履行の関係にたつか(東京地判H25、6,19)

 土地の売買契約に際して、代金の支払いと所有権移転登記手続と同時履行の関係に立つ。これは中心的な債務について対価関係に立つ債務間では同時履行の関係に立つという理解であり、代金支払いと付随的な債務とは同時履行の関係に立たないと考えられている(ただし、契約自由の原則からその旨の特約を定めれば有効であろう。)

 事案は、習志野市での約8億円の不動産の売買契約であり、買主が代金支払いを拒絶したことから、売主が契約を解除して違約金(約1億7000万円)を請求したものである。事案からすると双方とも事業者であり、買主ローン条項(ローンがでない場合は無条件に解約できる)を希望したが、その条項を入れることはできていない。買主は、金融機関からの融資を受ける際の条件として土地の確定実測図が求められ、買主は、売買契約時に、売主に土地の境界を確認し、確定実測図を交付することを売買契約の条件に明記する事を求めたが、結局、売買契約では、売主が所有権移転登記時までに確定実測図を買主に交付する義務を負うことと測量費用を買主が負担する条項が定められた。
 その後、測量は行われたものの、東日本大震災のため境界を確定することはできず、確定実測図は買主に交付されなかったというものである。

 判決(東京地判H25、6,18 判例時報2206号91p)は、①本件売買契約が現状有姿契約であり、②確定実測図が契約の当初から重要視されていたわではなく、③測量費用も通常の売主負担ではなく買主負担とされていること、④売買契約書上も確定実測図の交付につき、売買代金の受領と同時に行われるべきことが明示されていないこと、といった各事情から、確定実測図と売買代金支払いが同時履行関係に立たないと判断した。
 
 要するに、確定実測図の交付義務は付随義務のレベルにとどまるという判断である。妥当な判断というべきであろうが、買主とすると(特に転売を考えている場合)は、後の売買に際しては、土地の境界が大きな問題となることから、契約書上に境界確定書面の交付を先履行義務にするなどの予防措置が必要となると思われる(もちろん、ローン条項の活用も考えられる)。
 小さなことのようだが、結構大切なことである。、また、この点は、売買契約書の書き方にもよることから、仲介業者としても、後日になって、説明義務などの責任を負わないよう十分な検討が必要である。



投稿者 あさひ共同法律事務所