2014年1月26日 日曜日

弁護士の取引をめぐる裁判例(判例時報2204号)

 判例時報の息の長い連載に升田純教授の「現代型取引をめぐる裁判例」がある。2204号で342回目となる(毎月3回発刊なので単純に計算しても104月(9年弱)の連載である。このところ、弁護士の取引をめぐる裁判例の紹介が続いている。

 升田教授は福岡地裁にも勤務されたことがある裁判官出身のロースクールで教べんを取られる実務家教員であられ、個人的にも存じ上げているる。裁判例の紹介は、教授の論考をお読みいただくこととして、それ以外の点で教授の説を少し引用したい。

教授は、「新人の弁護士にとっては、法律の条文、法理、判例等をある程度知っていると、あてはめる事実関係が法理等に付いて来るような気持ちになり、事件の処理、依頼者等との対応ができると考えがちであるといった姿があちこちで見られる」とされる。引き続いて、「依頼者も、相手方も、事件も、事実関係も、証拠も法律の条文、法理に沿って行動したり、現れたりするものではなく、自分の知る法理等を振りかざして事件を構成し、事務処理を行うことは、とかく空理空論になりがちである。」とされる。
 
 

 前半の部分は少し分かりにくい。少し法的な知識があるとそれに「事実関係の方が付いてくる感じ」というのは、自分の知っている法理に事実関係を引き寄せがちであるということなら、新人弁護士の場合は特にそう考えやすいのかもしれない(実際は、相手方から事実関係を見るとどうなるのかを考えて再度検討するという作業が必要になる。、相手に立場から事件を見るということについては、それをいやがる依頼者が結構して苦労することも多々ある。そして依頼につながらないこともある。)。後半の部分は、前半でそのように考えてしまうと、それに有益な事実しか見なくなり(見えなくなる)、結局、事実関係に合致しない法理を使わなければならなくなることになる(もちろん、このことは、新人弁護士だけに限らないことである。)

 あんまり引用が長くなるのもどうかと思うのでこれくらいにするが(本当は、このあたりの教授の弁護士を取りまく現状認識には共感できる弁護士も多いと思う。)、教授が紹介されている裁判例を見ると、改めて、依頼者とのトラブルの種はどこにでも存在するという事を感じる。




投稿者 あさひ共同法律事務所